任意後見制度とは
任意後見制度
任意後見制度とは判断能力が健全なうちに、ご本人が認知症などによって判断能力を失ってしまった時に備えて、後見人の指名及び後見事務の内容などをあらかじめ決めておく制度です。判断能力が失われた後の措置として適用される法定後見制度に対して、任意後見制度は判断能力があるうちにご自身で後見の内容を決めることができるので、より自分に適した後見内容にカスタマイズすることができます。なかでも後見人を自分で決められる点は非常に大きなメリットと言えます。
法定後見との違い
法定後見制度では、申立て時、すでに判断能力が衰えているという前提ですので、『誰に』『どのように後見をしてもらうか』は、家庭裁判所と、家庭裁判所から選任された成年後見人が決めることになります、もちろん成年後見人もご本人のためには、どのような後見をしたら最もご本人のためになるかということを必死に考えながら後見事務にあたりますが、意思の疎通が難しい場合も多く、必ずしもご本人の意思を100%反映した後見内容になるとは限りません。任意後見制度はそういった後見事務の内容や後見人の人選についてもご本人が決めておくことができるので、いざ任意後見が開始されても自分らしく人生を過ごすことができる度合いが法定後見制度に比べてかなり大きいと言えます。
なお任意後見人には法定後見人にある取消権や同意権はありません。
家族信託との違い
任意後見制度も家族信託も、ご本人の判断能力が健全なうちに契約を結ぶという点では同じです。どちらも事前準備ですね。違いは、自分自身に焦点をあててフォローするか、自分の財産に焦点をあててフォローするかです。任意後見制度は『自分自身』に焦点をあてて、自分に判断能力が無くなった時、自分のお金をどう使い(財産管理)、どういう生活を送りたいか(身上監護)をトータルで考えて設定します。対して家族信託は自分の判断能力がなくなった後『自分の財産』をどのように管理、保存、処分したいか、誰に承継させたいかということを考えて設定します。
もうひとつ大きな違いとしては、家庭裁判所の介入を必要とするかしないかです。任意後見制度も後見を開始するためには、家庭裁判所が選任する任意後見監督人をつけなければいけません。結果的に任意後見制度も家庭裁判所の管理下におかれることになります。対して家族信託はそういった家庭裁判所の介入はなく、家族内(当事者内)で完結します。