家族信託のメリットと、メリットを活かした適用例

ここでは実際に家族信託という制度をつかうと、どんなことが可能かを家族信託のメリット別にまとめています。

1 認知症などで判断力が衰えたあとも積極的な財産運用が可能

認知症になってしまうとご本人はもちろんご家族でも、ご本人の財産を運用したり、処分したりすることが原則的にできなくなります。資産凍結問題です。
そこでご本人が元気で判断能力に問題が生じる前に自宅建物や土地、預貯金などの凍結しては困る財産や、賃貸物件、自社株など積極的に運用したい財産を、信頼できる家族に託しておく信託契約です。

 

認知症対策、成年後見を使わないためのシンプルな家族信託。
福島父郎さんは70歳、奥様とは5年前に死別、自宅建物と土地はご自身の名義で、現在は一人暮らしです。隣町に一人息子の一郎さん夫婦が住んでいます。
父郎さんはできる限りご自宅で生活したいと思っていますが、認知症になって独居での生活が難しくなったら、自宅建物と土地を売却して、そのお金で施設への入居を希望しています。
父郎さんの場合、認知症になるまでなにもしないでいると、いざその時になって自宅の売却をしようと思っても、本人の判断能力が失われているため、成年後見人をつけないと自宅の売却は難しくなってしまいます。成年後見制度の欄で述べていますが、自宅を売却するときのためだけに成年後見人をつけるのはあまり合理的ではありません。成年後見人は一度つけてしまうと、原則的に本人が死亡するまで後見人であり続けます。つまり自宅の売却という当初の目的は達成した後も本人が亡くなるまで月々、後見人への報酬が2~6万円程度発生します。これに対して家族信託で対応した場合、信託契約を結ぶときに数十万円という額がかかりますが、基本的にはその後のランニングコストはかかりません。成年後見人をつけた場合は2〜4年程度でその額(信託契約締結のための金額)に達してしまいます。

 

上記のケースで成年後見人をつけないようにして且つ必要な時に自宅を売却できるよう家族信託の活用をしてみましょう。

 

委託者:父郎さん
受託者:一郎さん
受益者:父郎さん
信託財産:自宅の土地と建物
とします。

 

受益権の内容は居住する権利と自宅売却後の売却代金になります。家に住み続けるということもその土地と建物から得る利益ですので、受益権として父郎さんが受けることができます。父郎さんが元気なうちは、そのまま自宅に住み続けて、自宅での生活が困難になってしまったら自宅を売却することができます。この時に父郎さんが認知症などで判断能力がなくなっていたとしても、すでに名義は息子の一郎さんに移っていますので、一郎さんが売却の手続きを進められます。そして一郎さんは信託契約に従って売却代金を施設の入所費用にあてることとなります。信託契約で定めていますので売却代金を父郎さんの施設入所費用とは別の用途に使うことはできませんので父郎さんも安心です。
このケースが家族信託の基本的な構造になります。つまり、『ご本人に判断能力がなくなった時、その財産を今までどおり運用する、または自分の思ったとおりに管理、処分できるように、信頼できる人にあらかじめ財産の管理、運用、処分の方法を定めて託しておく』という考えです。

2 遺言書にはできないこともできる。受益者連続型信託

A男さん70歳は自身の土地にアパートを建てて家賃収入を得ています。A男さんには認知症の妻B子さんがいますが子供はいません。A男さんは自分の死後、土地とアパートは認知症の妻B子さんの生活を支えるため、すべてB子さんに相続させたいと思っています。しかしB子さんの死後は、子供がいないためB子さんの兄弟姉妹などB子さんの親族に土地とアパートが相続されてしまうことを危惧しています。先祖代々受け継いだ土地なのでできれば自身の親族に相続させたいと思っていました。そこでA男さんには実の弟の子C男さん(A男さんの甥)がいるので、妻B子さんの死後は土地とアパートを甥のC男さんに相続させたいと思いました。
自身の財産を自分→妻→甥と相続させたい。
相続財産の指定方法として思いつかれるのが『遺言書』だと思います。しかし遺言書では次の代までしか相続先を指定できません。つまり「自分→妻」までは指定できても「妻→甥」までは指定できないわけです。これは遺言による相続で財産が妻の物になっているからで、他人の財産を自分の遺言で好きにはできないからです。この場合、さらに妻B子さんに『自分(B子さん)→甥』へと財産を相続させる旨の遺言書を書いてもらうことになりますが、妻Bさんはすでに認知症を患っており遺言書の作成は難しい状況です。また仮に遺言書を作成できたとしても、遺言書は作成者本人があとから容易に変更することが可能ですので、土地とアパートがC男さんに相続されるかどうかは、B子さんの死後まで確定しない不安定な状態におかれることになります。
家族信託を活用して「自分→妻→甥」の相続を実質的に実現させる。
家族信託を活用すれば実質的にA男さんの希望を実現することができます。

 

委託者:A男さん
受託者:C男さん
当初受益者:A男さん
第二受益者:B 子さん
財産の帰属権利者:C男さん
信託財産:土地と収益アパート
とします。

 

まず信託財産を土地と収益アパートとして、委託者兼当初受益者をA男さん、受託者を甥のC男さんにします。C男さんが土地とアパートの管理をして、A男さんが健在なうちはアパートの賃料などは受益権として今までどおりA男さんが受け取ります。第二受益者B子さん。A男さんの次の受益者をB子さんと定めておくと、アパートの管理者はそのままC男さんが継続しつつアパートからの賃料はB子さんが受け取ることになります。相続財産を受益権という形でうけとることによって、通常相続した場合と同じ効果があり、しかも通常の相続の場合はB子さんが管理などをしなければいけないところを、C男さんが受託者として管理してくれるオマケつきです。
帰属権利者C男さん。C男さんを最終的な財産の帰属先「帰属権利者」に設定しておいてB子さんの死後は家族信託を終了させて信託財産をC男さんに帰属させます。
これでA男さんの希望通りの財産の承継が成ったと思います。
これを受益者連続型信託といいます。記述したのは一つの例で、家族信託を利用すれば家族信託というルールの中で受益権として財産を比較的柔軟に次の代、その次の代と承継させることが可能です。

 

※家族信託のルール
30年ルール:信託法91条により受益者連続型信託は、「当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する」とあります。
わかりやすく記述すると、家族信託契約を結んだ時から30年たったあとにまだ次の受益者Xがいた場合、その受益者Xまでは受益権を承継させるけど、さらに次の受益者Zまでは受益権を承継させず、そこで家族信託は終了するという意味になります。

 

その他のルール:遺留分、相続税についての優遇は特にありませんので相続税対策や遺留分対策は別途必要になってきます。

3 障害のある子を支える家族信託。福祉型信託

K太郎さんは75歳で重度の知的障害のある息子のM一郎さん50歳と同居しています。奥さんのL子さんはすでに他界していてM一郎さんの身の回りのお世話は、K太郎さんがしています。また隣町にM一郎さんの弟のN次郎さんがいます。K太郎さんは自分が死亡した後のM一郎さんの生活を心配しています。
このまま何もしないでK太郎さんが亡くなった場合、相続人のM一郎さんとN次郎さんとで遺産分割協議をしなければならなくなりますが、判断能力がないM一郎さんは遺産分割協議に参加することができないので成年後見人を選任しなければ遺産分割をすることができなくなります。K太郎さんの遺言がある場合、遺産分割協議が不要となりますので遺産を分割するところまではできます。しかしその後、分割されてM一郎さんの財産になった金銭の管理等は、やはり重度の知的障害をもつM太郎さんには困難になってしまいます。
そこで家族信託を適用を考えます。

 

委託者:K太郎さん
受託者:N次郎さん
当初受益者:K太郎さん
第二受益者:M一郎さん
とします。

 

上記K太郎さん家族の場合、委託者兼当初受益者をK太郎さん。第二受益者をM一郎さん。受託者をN次郎さんとします。K太郎さんが健在なうちは、K太郎さんの財産はN次郎さんが管理して、受益権はK太郎さんが持ちます。信託財産が自己所有の賃貸アパートであればK太郎さんが賃料を受け取ります。自宅建物ならば受益権としてそのまま自宅に住む権利を得ます。K太郎さんは受益権の内容として受け取った財産、賃料や居住する権利を長男、M太郎さんのために使うことでM太郎さんの生活を支えます。K太郎さんが亡くなった後は、第二受益者として、今までK太郎さんが受けていた受益権の内容、賃料であったり居住権であったりを、M太郎さんが受けることになります。これで金銭面はK太郎さんが存命中の環境とほぼ同じ状態に保つことができます。
ここで考えておかなければいけないのは、受託者であるN次郎さんの負担です。第二受益者のM太郎さんはまだ50歳です。日本人男性の平均寿命を考えれば、あと30年程、N次郎さんは受託者としてM太郎さんを支えなければいけません。N次郎さんも当然としをとります。高齢になってからの受託者の事務は大変です。信託契約書を作成する時点で、やむを得ない場合、受託者を辞任できるよう設計しておき、第二受託者、第三受託者を信託契約書で定めておくようにします。N次郎さんに子供がいた場合は、その子供(M一郎さんの甥姪)に託す等。また第二受益者を引き受けてくれる信頼できる家族がいない場合は、法定後見制度等の利用も考慮します。

4 判断能力が衰える前から契約の効力が発揮されるメリットで、後継者の様子をみながらゆっくり会社の実権を渡す。指図権と万が一の信託解除。自社株信託

家族信託のいい点のひとつに、財産を託す人(委託者)の判断能力があるうちから信託の効果が出るということがあります。財産を託す人は託される人(受託者)の財産の運用の様子をみて評価することが可能です。そしてもし、託した財産の運用方法に問題があったり託した人に万が一の事態が起こった場合、信託契約を解除し、託した財産を自分のもとに戻すことも可能です。
このメリットを活かした家族信託のプランとして自社株信託があります。
自社株の内容としては議決権や人事権、そして配当を受ける権利などがあります。自社株を持っている人がその会社の所有者なわけです。そしてこの自社株も信託財産とすることができます。会社の実権を後継者候補に渡して、その仕事ぶりを見ることができます。
では例で見てみましょう。

 

例)家族信託を使って、徐々に会社の運営を後継者に渡していく。
味造さん70歳は県内5店舗のレストランを経営する運営会社『信託食堂株式会社』の社長さんで自社株(未上場株式)を100%もっています味造さんには長男の味雄さん45歳と長女の味子さん42歳がいます。味雄さんは信託食堂株式会社の専務取締役で、味子さんは独身で化粧品メーカーに勤めています。味造さんは今のところ健康に問題はありませんが、これからのことを考えてレストランの経営を少しずつ長男の味雄さんに任せようと思っています。経営権を移す方法として思いつくのは自社株の贈与や売買かと思います。会社の経営権を味雄さんに移すことにかなりの自信があったり、後継者候補として味雄さんしかいない場合は自社株を味雄さんに贈与又は売却という手段で渡してもよいかもしれません。しかし味造さんは味雄さんの経営ぶりがあまりにも自分の経営方法や理念と異なる場合は、長女の味子さんに化粧品メーカーを辞めてもらい、自分の後継者となってほしいという希望があります。ですが一度自社株を売買にせよ贈与にせよ味雄さんに渡してしまうと、それを再び取り戻すのは困難になってしまいます。また税金面でも売買の場合は味雄さんは自社株の買取資金を用意しなければいけませんし、味造さんには自社株を売却した際の譲渡所得税が課税されることがあります。贈与の場合も味雄さんには贈与税が課せられる可能性もあります。自社株信託を利用して株式を移転した場合、その移転については贈与税も譲渡所得税もかかりません。詳しくは【家族信託と税金】をご覧ください。

 

そして移転した自社株はなかなか取り戻すことが困難、ということは、自社株を売買や贈与で承継するということは、一発勝負ということでしょうか。後継者が立派に会社の経営を続けていける資質を持っていたら売買、贈与での承継も成功と言えるかもしれません。
そこで、少しずつ会社の実権を味雄さんに渡して様子を見たいと希望する味造さんについて、自社株信託を検討します。
自社株信託も家族信託と基本的な構造は同じなので委託者、受託者、受益者の三者で構成されます。

 

委託者:味造さん
受託者:味雄さん
受益者:味造さん
財産の帰属権利者:味雄さん
信託財産:味造さん所有の信託食堂株式会社の株式全部
とします。

 

信託契約が効力を有すると、会社の実権は息子の味雄さんに移ります。味雄さんは経営者として議決権や人事権を掌握して実質的に会社を運営していきます。もう経営権は移っているので仮に味造さんにが認知症になったとしても会社の運営には影響はありません。そして味造さんは受益者として会社が上げた利益から配当を受けることになり、生活水準は今までどおりを維持できます。また味造さんが元気なうちは味雄さんの経営手腕を見極めることもできます。さらに味造さんに【指図権】を設定しておけば株主総会などの大事な決定の場面で味造さんは議決権の行使について文字通り味雄さんに指図することができ、会社に対して影響力を残すこともできます。味造さんに権限を残すことによって一気に会社の実権を味雄さんに移すことを回避できるとともに大事な場面で助言することで味雄さんが後継者として成長することを助けられます。また事業承継には様々な事態が起こりえます。味造さんが味雄さんに会社を継がせないと決めることもあるでしょうし、味雄さんが事故に遭い会社の経営が出来なくなるなど不測の事態もあるかもしれません。その場合は味造さんの判断で信託契約を解除することができます(味造さんが受益権の全部を持っている場合に限ります)。信託契約が解除されると会社の実権が味造さんに戻ってきます。名義がまた味造さんへ移動しますが、受益権はずっと味造さんが持ったままなので、贈与税等の税金はかかりません。

 

このように自社株信託を活用すれば、少しずつ様子をみながら会社の実権を後継者へ移転していくことが可能です。以上、自社株信託のメリットを利用した事業承継の例を述べましたが、味造さんが亡くなり信託契約が終了すると、味雄さんが会社の運営権と利益を得る権利を取得し、完全な会社の所有者となります。【家族信託と税金】でも記しましたが、その時には相続税が発生したり、事業承継税制が使えなかったりしますので専門職と検討して適用の有無をきめるとよいと思います。

5 賃貸物件の管理とスムーズな財産の承継が可能。賃貸物件管理型信託

信託する財産の中には、もちろん土地と建物を含めることが可能です。自宅以外での土地と建物というと、ご本人の所有する収益アパートやマンションが思い浮かぶのではないでしょうか。賃貸物件の所有者が認知症などで判断能力がなくなってしまった場合、その物件の管理ができなくなってしまいます。入居者の募集、退去時の対応、老朽化してきた時の修繕、もしくは取り壊し、そして売却。これらは所有者の判断能力に問題ないからこそできることです。もし、何の対策もしないで所有者が認知症等になってしまった後にこれらのことをしようとすると、やはり成年後見人をつけなくてはいけなくなります。成年後見人のデメリットについては前述のとおりです。この問題でも、家族信託の適用を考えてみましょう。
例)賃貸アパートの所有者はA太郎さん75歳、奥様のB美さん70歳、A太郎さん夫婦にはC一郎さん50歳、D次郎さん47歳、E三郎さん45歳と三人の息子さんがいます。信託契約の目的は父親のA太郎さんが万が一認知症になってもアパートの管理と経営が滞ることのないようにすること。これを解決するための信託として

 

委託者:A太郎さん
受託者:C一郎さん
当初受益者:A太郎さん
第二受益者:B美さん
信託財産:収益アパート
とします。

 

委託者兼当初受益者を父のA太郎さん、受託者を三人の息子さんのうちの誰か希望者か都合のよい方、この場合はC一郎さんにしてみます。そしてA太郎さんが亡くなったあと賃料を受ける人として第二受益者を奥様のB美さんとします。これでA太郎さんが亡くなっても、B美さんが認知症になっても、C一郎さんがアパートの管理をして賃料はB美さんのために使うことができて、B美さんの生活も安定しますね。B美さんが亡くなった後、賃貸アパートを売却するとご兄弟3人の意見が一致しているのであれば、B美さんが亡くなった時点で信託契約を終了させ、法定相続分どおり兄弟3人に賃貸アパートの持分を帰属させてもいいかもしれません。上記ケースの場合は、信託契約後、A太郎さんが認知症になっても、死亡してしまっても、さらに残された奥様が認知症になっても、すでに受託者としてC一郎さんが管理権限を持っていますので、アパートの管理、運営には問題ありません。
今回は将来A太郎さんが認知症になるということも大いに考えられるので、他のご兄弟であるD次郎さんやE三郎さんを受益者代理人にしておいたり、又、C一郎さんの管理権限の中にアパートの売却も含まれているのであれば、司法書士や、行政書士など専門職を信託監督人に選任しておけば、アパートの売却について、その信託監督人の助言を受けることができます。

 

さて、上記ケースではご兄弟の中で両親が亡くなったら賃貸アパートを売却するという合意が前もってあった場合ですので、共有持分として兄弟3人で3分の1づつ相続しても、すぐに3人全員の同意でアパートを売却できます。では、両親が亡くなっても当分の間アパートを売却せず共有財産として所有していく場合はどうでしょう。その場合、もし当該アパートを売却しなければいけなくなった場合や老朽化による建て替えが必要になった場合、共有者全員の同意が必要になります。その時に3人の中の一人でも首を縦にふらなかったり、認知症になって判断能力を失ってしまっていたり、所在が不明になっていたりすると、原則的にアパートの売却や建て替えはできなくなってしまいます。また自身の共有持分3分の1については、自身1人の判断でまったくの他人に売却することが可能なため、もし一人が自身の持分を他人に売却してしまった場合、兄弟2人と見ず知らずの人1人の共有となる可能性もあり、さらにアパート全体の売却はさらに難しくなります。また共有期間中に共有者の誰か一人が亡くなったといった場合は、その持分がさらに亡くなった人の相続人に相続されるので、相続人が数人いる場合は、持分が細分化されて分散してしまい、売却も建て替えも困難になります。ではこの共有状態の問題を家族信託で解消しようとする場合も見ていきましょう。

 

上記の相続関係の場合でA太郎さんの死後もアパートの売却はせず共有状態とする想定のとき、A太郎さんが将来の共有状態を心配した場合、もし3兄弟の中で子がいる者があればその子(便宜上、E三郎の子F雄25歳とします)を当初から受託者とし、委託者兼当初受益者A太郎、第二受益者B美、第三受益者C一郎、D次郎、E三郎としておけば、第二受益者B美さんが亡くなっても信託契約は終了せず、信託財産である賃貸アパートは受益権として3兄弟に承継され、かつ管理は引き続きA太郎さんの孫にあたるF雄さん一人で行うことができます。3兄弟のうち誰かが認知症になっても、万が一同意を得られなくても、F雄さんは信託契約に従って、信託財産である賃貸アパートの売却や建て替えの手続きをすすめることができます。

 

委託者:A太郎さん
受託者:F雄さん
当初受益者:A太郎さん
第二受益者:B美さん
第三受益者:C一郎さん、D次郎さん、E三郎さん
信託財産:収益アパート
財産の帰属権利者:F雄さん
となります。

 

上記ケースではF雄さんがキーパーソンであるかと思います。F雄さんという次の世代の人がいたからこそ安定的な家族信託のプランができていました。もしF雄さんがいない場合は、3兄弟の中の誰かが受託者となることも可能ですが、同世代ですので誰にどの順番で万が一のことが発生するかはわかりません。受託者に万が一のことがあっては家族信託が途切れてしまうこともありますので、その場合はについては受託者を複数人設定しておくのか、第二受託者、第三受託者と順次一人ずつ受託者の地位につくようにするのか等、個別に検討が必要になります。